2025年1月29日
執筆者:株式会社スカイマティクス 代表取締役社長 渡邉善太郎

点群処理をマスターする!
点群処理ソフトに依存しない本物のスキルを養う方法

近年、ドローン測量が建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させています。ドローン測量や3Dスキャナーから生成した点群データは、建設現場での意思決定や工事管理に欠かせない重要な情報源となっています。

しかし、この膨大な点群データを適切に処理し、有効活用するためには、高度な点群処理技術が必要です。

ここでは、点群処理の基本から技術的な詳細までを紹介し、点群処理の重要性と点群処理のプロを育成するための方法を解説します。

点群処理とは?基本的な概念を理解しよう

点群処理は、ドローンや3Dスキャナーを使用して得られた大量の「点」の集合体(点群データ)を処理する技術です。このデータは、建設現場や地形の詳細な3Dモデルを作成するために使用されます。点群データは、実際の地形や建物、構造物の精密な3Dデジタル表現を提供し、設計や施工計画に役立つ情報を提供します。

点群データには通常、数百万、時には数億のポイントデータが含まれ、それを適切に処理することで、高精度な3Dモデルや計測結果を得ることができます。これが建設土木工事のi-Constructionにおける出来形管理、工事管理の効率化や精度向上に直結するのです。

点群データそのものについて、詳しく学びたい方はこちらの記事をご覧ください。
今活用が進んでいる点群データとは?ドローン測量で得られる3次元データが熱い

点群処理ソフトの操作に頼らない技術習得の重要性

点群データの処理には、一般的に点群処理ソフトを使用します。点群処理ソフトを使うことで、特別な専門知識がなくても、ある程度の処理は簡単に行えるというメリットがあります。
しかし、これだけでは技術や処理プロセスの理解が不足してしまい、いくつかの問題が生じることがあります。

たとえば、ソフトの操作に頼りすぎると、出来形計測データなどの正しいデータを作れなかったり、ソフトが変わった場合に操作ができなくなったり、操作ができる人が限られ、属人化してしまうというリスクがあります。

そこで重要なのは、処理プロセスをしっかりと理解することです。この理解を基に、実際にその知識をインプットしてからソフトの操作を学ぶことが、技術の習熟に繋がります。
つまり、ソフトの操作方法だけでなく、なぜそのような処理を行うのかという「背景」の部分をしっかりと学ぶことで、どんなソフトを使っても柔軟に対応できる技術力が身につきます。

これにより、ただのソフト操作のスキルではなく、点群処理全体を理解し、現場での問題解決力が高まるのです。

点群処理技術の詳細とその重要性

点群データの処理には、いくつかの高度な技術が必要です。以下に、建設現場における出来形管理を想定した点群処理のプロセスと技術の詳細を説明します。

①点群データの取得

ドローンやレーザースキャナーを用いて、高精度な点群データを作成します。この段階での精度が最終的な結果に大きく影響します。ドローンの場合、一般的にドローン測量ソフトを使って作成します。

②座標・標高変換

日本では一般的に、座標系は平面直角座標系、高さは標高を用いて出来形を管理します。ドローンはGPSなどのGNSSで位置を取得しているため、高さは楕円体高で記録されます。また、平面直角座標系は、日本国内でのみ使われる座標系のため、一部の海外製ドローン測量ソフトは、これに対応していません。そのため、入手した点群データが、平面直角座標系と標高を用いていない場合は、座標系を変換したり、高さを標高に変換する必要があります。

③不要点除去

点群処理において最も重要なプロセスです。不要点とは、その名のとおり点群データの中で出来形管理に不要な点のことです。出来形管理の計測対象から除外したい点とも言えます。不要点の具体的な例として、点群生成時に生じた空中や地中のノイズがあります。これらのノイズは、写真から特徴点を抽出しマッチングを行う時に、本来と違う点をマッチングさせてしまうことで異なる場所に点が作られることで発生します。また、建機や電線、樹木など、出来形管理の対象外のものが写真に映り込むと、本来必要のないものも点群データに含まれてしまうため、不要点として除去する必要があります。
不要点の除去には統計手法を用い、主な手法として半径外れ値除去、DBSCAN、AIによる3つの方法をノイズの特性に応じて使い分けて処理をします。


④欠損部の補間

地物などの不要点を除去すると点群に欠損が生じます。また、点群データを生成する過程で、写真と写真の紐づけに失敗すると点群がうまく作成できずに、欠損が生じることがあります。しかし、出来形管理に必要な範囲で欠損が生じてしまうと寸法や体積などを正しく計測することができません。そのような場合、出来形管理を行う前に、点群に生じた穴を埋める必要があります。欠損部の穴を埋める処理を、欠損部の補間といいます。
具体的なプロセスとして、欠損範囲を選択、欠損箇所にTIN(地形の3次元形状を三角形の集合体として表現したもの)を生成し、TINの各面に色付けをした上で、TINから点群を生成することで欠損部を補間するという4ステップで行います。

⑤点群データの合成

例えば、エリアが広い場合、複数のフライトで撮影した結果、撮影枚数は数千〜1万枚などに及ぶことがあります。大量の写真から点群データを生成しようとすると、使用するパソコンやソフトの処理性能の制約上、写真をフライト単位や領域単位でいくつかに分割して、処理する必要があります。この結果、計測対象範囲で複数の点群データが生成されることになり、それらをただ合わせるだけでは、計測時や計算時の誤差により、ぴったりと重ならず、段差が生じることがあります。出来形管理のための品質の良い点群を作るためには、これらの段差をぴったりと重ねて、スムーズな表面を持った点群データを合成する必要があります。

⑥点群密度の変更

出来形管理要領の中では、出来形管理に必要な点群密度が定められています。従い、点群密度を変更する際は、出来形管理要領に定められた点群密度を満たす必要があります。 具体的には、出来形計測データでは0.01m2あたり1点以上、出来形評価用データでは1m2あたりに1点以上の点群密度が必要となります。しかし、点群密度は高ければ高い方が良いというわけではありません。点群が多すぎると、「目視で確認がしにくい」、「処理の負荷が増える」、「ファイルサイズが大きくなり扱いづらくなる」、などのデメリットが生じることがあります。従い、出来形品質を確保しつつ、可能な限り密度を下げる処理を行うことが重要です。

⑦面データの作成

面データとは、多角形で構成されるデータのことで、代表的なものに欠損部補間のプロセスで紹介したTIN(地形の3次元形状を三角形の集合体として表現したもの)があります。標高変換、不要物の除去、欠損部の補間、合成、点群密度の変更と、一連の処理を行ったあとの点群データから面データを作成します。点群処理ソフトによっては、面データのことをメッシュと呼び、このプロセスを「データのメッシュ化」と言ったりします。

このようにして完成した出来形計測データと出来形評価用データを使い、出来形管理を行います。

既にドローン測量や点群処理ソフトを活用されている方でも、点群処理の深層理解で技術を身につけて、ソフトに依存しないスキルを養うことで、点群処理のプロになり、競争力を向上することができます。ぜひ、専門的なカリキュラムを受講し、プロを目指しましょう。

点群処理のマスターと点群処理のプロの育成には「くみきトレ」がおすすめ

点群処理をマスターし、プロを育成するには、オンライン型建設DX推進人材育成研修「くみきトレ」がおすすめです。
「くみきトレ」のカリキュラムは、まさにドローン測量と点群処理のプロを育成するために設計されています。このカリキュラムでは、最新のドローン測量技術を学びながら、点群処理、そしてその活用方法に至るまで、実務に直結したスキルを提供します。

くみきトレの特徴は、次のように理論・原理の学びと実践的なスキル習得の両方をe-Learning形式でカバーしていることです。

オンライン動画学習プラットフォーム

場所や時間に縛られず、どこからでも、スマホでも動画により受講可能で、業務と並行して効率的に学習できる環境を提供します。

点群処理をマスターするカリキュラム

点群処理について、ご紹介した点群処理のプロセスをさらに深く学ぶことができ、ソフト操作に頼らない点群処理の本質をマスターできます。

無料の点群処理ソフト「CloudCompare」を使った演習

点群処理ソフトには、福井コンピュータ社の3D点群処理システム「TREND-POINT」など素晴らしいソフトがあります。しかし、有償ソフトでは全員がスキルを習得することは困難です。「くみきトレ」では、無料の点群処理ソフト「CloudCompare」を操作し、一連の点群処理データを体験できる演習を通じて、より多くの人が実践的なスキルを身につけることができます。

高評価の実績

先行受講した企業からは「満足度94.9%」という高評価を頂いており、現場で即戦力となる人材を育成するためのプログラムとしての実績があります。

広範な対象者層

専門的な内容をオリジナルの図解と説明で分かりやすく体系立て学べることで、技術職から事務職まで、誰でもドローン測量・点群処理を中心とした建設DX推進に必要な知識とスキルを習得でき、現場対応力と問題解決力を養うことができます。

人材開発助成金の活用

人材開発助成金は、企業が従業員のスキルアップを目的とした研修を実施する際に利用できる助成金です。この助成金を活用することで、企業は「くみきトレ」の研修を導入する際のコストを抑え、社員のスキルアップに投資することができます。
国が進めるリスキリング強化の方針を受けて、今後ますます多くの企業がこの助成金を活用することが予想され、特に、厚生労働省が令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設した人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」を活用し、講座受講後に助成金を申請して審査が通り、助成金交付がされた場合には、中小企業の場合、実質負担25%、大企業の場合、実質負担40%で受講ができます。

助成金を活用することで、企業は従業員のスキルアップにかかるコストを削減し、より多くの社員に研修を受けさせることができることから、今がリスキリングに着手するチャンスと言えるでしょう。

一人1訓練あたり

経費助成率 支給限度額
中小企業 75% 30万円
中小企業以外 60% 20万円

まとめと今後の展望

リスキリングを進め、ドローン測量や点群処理といったデジタル技術を活用できる人材を育成することが、建設業界の未来を支えるカギとなります。「くみきトレ」の研修を通じて、ドローン測量や点群処理の即戦力となる人材を育成することで、企業は業務の効率化と生産性向上を実現でき、DX推進を加速させることができます。

さらに、人材開発助成金を活用すれば、企業はコストを抑えつつ従業員のスキルアップを支援でき、従業員も自分で調べ、不安を持ちながら学ぶ必要がなく、安心して効率的にスキルアップに取り組むことができます。
これからの建設業界の競争力を保つためには、リスキリングとそれを支える研修プログラムが不可欠です。

まずは、「くみきトレ」の研修プログラムを活用し、DX時代の建設業界を支える人材を育成しましょう。