2023年1月26日

ドローン測量で計測したデータを公共工事の時に役所に提出できる!?
注意点なども簡単解説!

近年ではドローンの普及によって、測量業界ではドローンが必須となってきました。10年ほど前からドローンを活用した測量が増え始め、2015年12月には国土交通省が建設産業分野へのi-Constructionの導入を決定しています。

そして2018年からは新たなフェーズに突入し、現在ではi-ConstructionによるICTの全面的な活用として、ドローンによる3次元測量が必須となっています。

そこで今回はi-Constructionに限らず、ドローン測量での成果は国土地理院をはじめとする役所に提出できるのかを解説します。

ドローン(UAV)測量とは

はじめにドローン(UAV)測量とは、どのような測量を呼ぶのかを解説しておきましょう。

測量業を監督するのは国土交通省であり、公共測量を行う際には国土地理院の長に事業計画を提出し、技術的な助言を受けなくてはなりません。

つまり公共測量におけるトップは、国土地理院であるといえます。そして測量業界にて厳密にいうと「ドローン測量」と呼ばれる測量は存在しないのです。

正式には「UAV(無人航空機)を用いた測量」となる

ドローンとはあくまで通称名であり国土地理院では、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)と呼んでいます。

したがって、ドローン測量は「UAVを用いた公共測量」が正式な測量名となっています。ただし、実際の現場では「UAVを用いた公共測量」とは呼ばず、通称名であるドローン測量で通じているのが現状です。

ドローン測量は比較的簡単に3次元測量ができるメリットがある

ドローン測量では、比較的簡単に3次元測量が可能なメリットがあります。従来の測量では遺跡の発掘現場や工事現場での測量は、ヘリコプターによる空中写真測量を行い、図化という作業を行った上で、3次元データを取得する方法がメインでした。

狭小な範囲であればラジコンヘリでの空撮にて、3次元データを取得していましたが、空撮後の行程は同じです。

ところがドローン測量では、撮影後の解析ソフトが劇的に進化しているため、比較的簡単に3次元データを取得できるようになっています。

レーザースキャナーを搭載することも可能

3次元データを取得する際に、ドローンにレーザースキャナーを搭載することも可能です。

樹木のある場所では通常の空中写真測量は不向きであり、正確な地表面の計測ができません。レーザースキャナーなら地表面までの計測が可能となるので、使い分けすることでさまざまな場所の3次元データ取得が可能となります。

ドローン測量のメリット

ドローン測量のメリットは、何といっても工数を大幅に削減できて、測量全体のコストを抑えることが可能な点です。たとえば、従来のヘリコプター実機での撮影では、次のような手順が必要でした。

1:撮影計画
2:ヘリコプターの手配 ⇒×
3:現場となる自治会への挨拶 ⇒×
4:撮影現場付近の住民へのお知らせ ⇒×
5:標定点の設置とTS測量
6:撮影当日の天候確認とパイロットとの連絡 ⇒×
7:撮影現場での指示 ⇒×
8:標定点の撤去
9:写真の送付 ⇒×
10:写真の確認と3次元データの取得作業

ザっと説明するとこのような手順が必要で、場所によっては交通整理も必要なケースもあります。

ヘリコプター実機が低空飛行して空撮を行うので、近隣住民への周知は必須であり当日の天候確認も重要で、雨天では中止する必要があります。

近年はセンサーの性能も良くなり、同じ高度でより高解像度の画像が撮影できるようになりつつありますが、従来はヘリコプターによる写真測量には数百万円という費用が掛かっていました。空港から現場までの飛行が必要なため、空港と現地の天候確認も必須となります。

一方でドローンでの行程では「⇒×」の表示がある、行程「2・3・4・6・7・9」の6つの行程が不要です。

つまり10行程が4行程に短縮されるので、これを見れば大幅なコスト削減が可能となるのはお分かり頂けるでしょう。

公共工事とは

公共工事とは、国や地方自治体が発注する土木建築に関連する工事、または測量を指して呼ばれています。公共工事を行う際にはほとんどの場合、公共測量が発注されます。

公共測量とは「測量に要する費用の全部、または一部を国・公共団体が負担・補助して実施する測量のこと」で、基準点測量、地形測量、地図調製(地図編集)をいい、測量用写真の撮影も含まれます。

そして、局地的測量や高精度を必要としない測量は、公共測量から除外されます。

公共測量作業規定の準則に基づいて測量を行う

公共測量は平たくいえば、国や地方自治体の税金を使って行う測量であり、公共事業における測量を指してします。

そして、精度が保たれるよう「公共測量作業規定の準則」に沿って測量が行われます。公共測量作業規定の準則とは、どのような手順で測量を行うのかが記載されたマニュアルのようなものです。

公共測量には手続きが必要

出典:国土交通省国土地理院 公共測量とは
https://www.gsi.go.jp/hokkaido/koukyou-koukyou-koukyou.htm

このように公共測量では手続きが必要であり、公共測量計画機関と国土地理院、そして測量業者との3者の連携が必要で、さまざまな書類の提出が求められます。

基準点や水準点を使用する

出典:国土交通省国土地理院 高さの基準
https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/suijun-base.html

公共測量は高い精度が求められるので、国土地理院が定めた基準点や水準点を使用しなければなりません。

地球上の位置や海面からの高さが正確に測定された三角点、水準点、電子基準点を基準点と呼んでいて、精度によって1級~4級まで分類されています。

水準点とは土地の高さを求めるのに必要不可欠なもので、東京湾の平均海面を標高0mとして計算されます。水準点の基準は日本水準原点であり、東京都千代田区永田町1丁目1番地となる国会前庭北地区内(憲政記念館付近)に設置されています。

現在はこの日本水準原点の標高は24.3900mとされていて、基準・一等・二等・三等の種別があり、全国に約22,000点設置されています。

ドローン測量で計測したデータは役所に提出できる?

今度は「ドローン測量で計測したデータは役所に提出できる?」との疑問について解説します。

ここでいう役所とは、国もしくは地方の自治体のことで、これらの役所にデータを提出するとなれば、先に解説した公共測量に該当することがほとんどです。

ただし、局地的測量や高精度を必要としない測量は公共測量から除外されるので、ビル1棟分の地形測量や、公共測量作業規定の準則にある精度を必要としない測量であれば、ドローン測量での計測データを提出することは可能となります。

庁舎の建設予定地の3次元測量

たとえば、ある市役所の庁舎を建て替える際に、建設予定地の残土処理や面積を知る目的で、高い精度を必要としないなら、ドローン測量で計測したデータを役所に提出できます。

学校のグラウンド整備のための測量

学校のグラウンドを整備するために、高低差を測量することもあります。この際も公共測量作業規定の準則にある精度を必要としませんし、測量範囲も局地的となるため公共測量にはなりません。

したがって、ドローン測量で得たデータの役所への提出は可能です。

学校や庁舎の壁面や屋根の調査

ドローン測量では赤外線診断も可能なので、学校や庁舎をドローンに赤外線カメラを搭載して、雨漏りや破損などの調査ができます。ドローンによる赤外線診断の結果も役所に提出できます。

UAVを用いた公共測量マニュアル(案)に基づいた測量結果

ドローンでの公共測量では「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」に基づいた測量が必要です。ですから、このマニュアルに基づいたドローン測量であれば、測量データを役所に提出できます。

役所が発注するならドローン測量の成果は提出可能

公共測量であれば「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」に基づいて測量すればよく、公共測量に属さないのであれば、制約なく測量結果を役所に提出できます。

つまり、役所が発注する測量であれば、公共測量であるなしに関わらずデータの提出は可能なのです。

UAVを用いた公共測量マニュアル(案)の概要

ではここで、公共測量となる「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」の概要について解説しましょう。

このマニュアルは公共測量だけでなく、i-Constructionに関わる測量においても適用されます。またこのマニュアルの内容は2020年(令和2年)3月31日に、UAV点群測量及び地上レーザ点群測量、数値地形図作成に地上レーザ測量及びUAV写真測量として、公共測量作業規定の準則に新規追加されています。

作業工程が明記されている

UAVを用いた公共測量マニュアル(案)(以下マニュアル)には、UAVによる空中写真を用いた数値地形図作成と、UAVによる空中写真を用いた三次元点群作成の作業工程が明記されています。

したがって、それぞれの測量をドローンで行う際には、この行程を遵守しないといけません。

図1 UAVによる空中写真を用いた数値地形図作成(第2編)における工程別作業区分及び順序

出典:UAVを用いた公共測量マニュアル(案)
https://www.gsi.go.jp/common/000186712.pdf

図2 UAVによる空中写真を用いた三次元点群作成(第3編)における工程別作業区分及び順序

出典:UAVを用いた公共測量マニュアル(案)
https://www.gsi.go.jp/common/000186712.pdf

従来からの変更点・平成29年3月改正の内容

平成29年3月31日に、最新のマニュアル改正が行われています。ドローン測量における大きな点は、セルフキャリブレーションを標準としたことでしょう。

また、空中写真の重複度が80%以上とした撮影計画が可能となった点も大きなポイントです。ここでは、最新の改正点についてお伝えしましょう。

【第2編】UAVによる空中写真を用いた数値地形図作成

撮影する空中写真の地上画素寸法(第 22 条運用基準)

・作成する数値地形図の地図情報レベルに応じて、地上画素寸法が明確になりました。

【第3編】UAVによる空中写真を用いた三次元点群の作成

標定点及び検証点の配置(第 53 条)
・外側標定点については、計測対象範囲の外側に配置することが標準となっています。検証点のうち、外部検証点は廃止し、検証点の総数を標定点の半数以上が標準となりました。

標定点及び検証点の観測方法(第 54 条)
・位置精度に応じて作業方法が明確になりました。

空中写真の重複度(第 57 条運用基準)
・撮影後に実際の重複度を確認できる場合は、隣接空中写真との重複度が80%以上とした撮影計画が可能になりました。

カメラキャリブレーション(第 65 条運用基準)
・セルフキャリブレーションが標準となりました。

第65条運用基準 セルフキャリブレーションのメリットは大きい

キャリブレーションとは公共測量における写真測量に対応するため、レンズの焦点距離や中心位置のズレの歪みなどを正確に把握して、補正係数を割り出し測量用に使用するためのものです。

従来のカメラキャリブレーションは、専用の機器や設備を必要としていましたが、改正ではこの点が削除されて、新たにセルフキャリブレーションを標準とすることが記載されました。

これにより、各解析ソフトの三次元形状復元計算が使用できるようになり、使用できる解析ソフトの幅が広がるメリットが得られます。

また、従来では成果物として「カメラキャリブレーション実施記録又は、これに相当する資料」の提出が必要でしたが、改正によってこの資料は不要となりました。

役所に提出するための注意点

ここまででドローン測量による計測結果は、役所が発注する測量であれば問題なく提出できることを解説してきました。

ただし公共測量となる「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」によるドローン測量ではマニュアルに沿った作業が必要であり、その作業を行った成果でないと受け付けてもらえません。

ここでは「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」に沿った成果を提出するための注意点を解説します。

三次元点群の位置精度

空中写真を用いた三次元点群作成を行うドローン測量では、標定点の設置および検証点の設置が必要です。

これは作成する三次元点群の位置精度を確保するために必要なもので、位置精度は目的に応じて必要な作業を行うとされています。

位置精度 可能となる測量
0.05m以内 出来形管理
0.10m以内 起工測量または岩線計測
0.20m以内 部分払い出来高計測

マニュアルでは各精度に対しての可能となる測量は、このように定められています。

標定点および検証点の設置

先に既にお伝えしていますが、精度を保つために標定点および検証点の設置が必要となります。

標定点とは地上の位置情報(座標)を得るために必要なもので、検証点とは3次元データに付与した位置情報(座標)が正確であるかを確認するために必要なものです。

確認した座標の誤差がプラスマイナス5cm以内であれば、精度を満たしていることとなります。

標定点および検証点には次の「対空標識」を設置します。この対空標識はマニュアルにて次の4つの模様が標準とされています。

出典:UAVを用いた公共測量マニュアル(案)
https://www.gsi.go.jp/common/000186712.pdf

また、標定点および検証点の配置の距離も、マニュアルで次のように決まっています。

位置精度 隣接する外側標定点間の距離 任意の内側標定点とその点を囲む各標定点との距離
0.05m以内 100m 以内 200m 以内
0.10m以内 100m 以内 400m 以内
0.20m以内 200m 以内 600m 以内

この距離を基準に、次のように配置します。

出典:UAVを用いた公共測量マニュアル(案)
https://www.gsi.go.jp/common/000186712.pdf

三次元形状復元精度管理表(三次元点群作成)への記載が必要

標定点および検証点は、成果物のひとつである「三次元形状復元精度管理表(三次元点群作成)」への記載が必要です。

ですから必ず設置する必要がありますし、精度内に入る測量が必要となります。つまり、単にドローンでの測量を行いその結果を提出するのでなく、精度のある測量結果が求められるのです。

今後のドローン測量での公共工事

先に「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」が、平成29年3月31日に改正されたことをお伝えしていますが、実はこの改正にてドローン測量の制約がかなり緩和されているのです。

たとえば、第61条の運用基準においても、キャリブレーションやデジタルカメラの性能などが細かく定義されていたものが、すべて削除されるなど、自由度がかなり大きくなっています。

その背景にはドローン測量が、国土交通省が推し進めるi-Constructionで多く利用されるようになり、ドローンの機体性能のアップ、解析ソフトの高性能化が進んだことにあるといえます。

RTKを搭載することで精度が高まる

近年ではドローン測量において、RTKを採用するケースが多くなっています。RTKとは、リアルタイムキネマティック(Real Time Kinematic)の略で「相対測位」と呼ばれる測量方法のひとつです。

そしてこのRTKの位置誤差は、センチメートル単位と非常に精度の高い測量が可能となります。

GPSの誤差範囲は数メートルなので、元々GPS機能を搭載しているドローンにRTKを搭載すれば測量誤差を数センチ単位に抑えることが実現します。

先にお伝えした位置精度ではi-Constructionでの起工測量では0.10m以内なので、十分精度に入る測量成果を得ることが可能です。最も精度の高い出来形管理においても、0.05m以内なので1~2cmまでに収まるようになれば、すべてのドローン測量の精度が確保されることとなります。

標定点や検証点が不用になる日も近い

ドローンにRTKを搭載することで測量誤差が1~2cmまでになれば、マニュアルに定められている標定点や検証点は不要になるでしょう。

また、解析ソフトの性能もアップしていくはずなので、三次元形状復元計算の仕様も緩和されることが予想されます。

マニュアルでの制約が緩和されることで、公共測量におけるドローン利用がますます増えることとなるはずです。

現段階での公共測量におけるドローン測量の適用範囲は「土工現場における裸地のような、対象物の認識が可能な地区に適用することを標準とする」となっています。しかしながら、今後はドローンによるさまざまな場所の測量が可能になっていくでしょう。

「くみき」は公共工事における出来形管理にも対応が可能!

それではここで誰もがドローン測量にて簡単に3次元データを取得できる「くみき」をご紹介しましょう。

「くみき」は専門知識が不要で、誰もが簡単に地形データを生成できるシステムです。簡単な空撮によるドローン画像をクラウドにアップロードするだけで、オルソ画像や3D点群モデルなどの地形データが自動生成されます。

さらに直感的な操作で、面積・体積・断面などの本格ドローン測量が可能な、魅力あるシステムなのです。

3ステップで実現するドローン測量

「くみき」では次の3ステップにて、ドローン測量が実現します。

ステップ1:ドローンで撮影する
ステップ2:空撮画像をクラウドにアップロード
ステップ3:WEB上で直ぐに計測ができて、情報共有できる

精度管理表の自動出力機能により役所への報告を効率化

公共工事におけるUAV(ドローン)測量に際して必要となる国土交通省指定フォーマットでの「三次元形状復元精度管理表」および「UAV撮影コース別精度管理表」の2種類のレポートを出力できる機能を活用すれば、行政機関への報告・提出書類の作成を「くみき」上で一気通貫に行うことが可能です。

地理院タイルでのデータ出力も可能

地理院タイルとは、国土地理院が配信するタイル状の地図データです。地理院タイルでは電子国土基本図や数値地図25000(土地条件)など、さまざまな地図が無料提供されていて、GISシステムにインポートして色んな用途に利用されています。

「くみき」では生成した3次元データを、地理院タイルにて出力が可能です。既に地理院タイルを利用してGISシステムを利用している方では、同じタイルの座標にて3次元データを簡単にオーバレイして利用できます。

まとめ

今回は「ドローン測量で計測したデータは役所に提出できる?」との疑問に答える形で、ドローン測量と公共測量について色んな視点から解説してきました。

現在の公共測量で利用するドローン測量は「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」に従って、測量しなければなりません。

ただ、マニュアルの改正にてかなり制限が緩和され、ドローン測量が利用しやすくなってきています。今後もドローンの機体性能のアップや解析ソフトの向上によって、さらに緩和されてくることが予想されます。

今後はより幅広い分野で、ドローン測量が活用されるはずです。その際には誰もが簡単に3次元データを生成できる「くみき」が強い味方になってくれるでしょう。