2022年9月26日

測量に変革をもたらしたi-Constructionとは?
どのように変わったのか徹底解説!

i-Construction(アイ・コンストラクション)の登場によって、建設業界・測量業界に変革が起きました。ICTの施策を建設現場に導入することを目的として、国土交通省がi-Construction導入を推し進めています。

建設現場ではドローンによる3次元測量が必須とされており、その技術は建設業界を超えて、現在では多くのシーンで活用するようになっています。

i-Constructionがどのように測量を変えたのか、なぜドローンによる3次元測量が加速することになったのかを詳しく解説します。

そもそも国土交通省が進めるi-Constructionとは

出典:i-Construction推進コンソーシアム

i-Construction(アイ・コンストラクション)とは、2016年度より国土交通省が進めている取り組みで、建設現場にICTを活用し生産性の向上と、建設業界に新たな魅力をもたらすことを目的としています。

ここでは、i-Construction(アイ・コンストラクション)について、分かりやすく解説します。

i-Construction(アイ・コンストラクション)が誕生した理由

i-Constructionが誕生した理由には、建設業界の人出不足解消が一つに挙げられます。

取り組みを始めた当初では、2020年の東京オリンピックを控えて、建設・土木業界はニーズが高まり市場規模も60兆円を超える勢いでした。

その一方で、現場技術者の高齢化が進んでおり「きつい・きたない・きけん」の3K業界としてのイメージが、若者の現場離れの要因にもなっていて深刻な人手不足に悩まされていたのです。

そこで、建設現場の生産向上を狙って誕生したのが「i-Construction」であり、品質や安全を守りながら多くの人材と時間をかけずに、効率よく施工する仕組を作ったのです。

同時に、ICTを導入することで、従来の悪いイメージを持つ3Kから、「給与が高い・休暇が取れる・希望が持てる」との新3Kのイメージを生み出し、魅力ある業界として人手不足の解消も狙っています。

i-Constructionと従来の施工方法との違い

出典:国土交通省 i-Construction~ 建設現場の生産性革命~ 参考資料
https://www.mlit.go.jp/common/001127740.pdf

建設現場にICT技術を導入したi-Constructionですが、従来の施工方法との大きな違いは、最初に「ドローンによる3次元測量」を行う点と、測量から施工、検査までを一貫して行う点です。

従来では、測量はTS測量などによって測量会社が行い、その測量結果を基に平面図・断面図・横断図を使った設計図を作成。その後、設計図から土量を算出するなどの施工計画を作ります。

施工現場では、設計図に合わせて丁張を設置しこれに合わせて施工。検測と施工を繰り返しながら、土地を整形していきます。最終的な検査も、多くの書類を作成しアナログにて検査を行うので時間を要していました。

このように、従来の施工ではICT技術は一切導入されず、アナログチックな施工方法といわざるを得ない状況です。 これに対してi-Constructionでは、施工会社が一貫して次の工程を行うようになりました。


1:ドローン等による3次元測量を実施
⇒ 短時間で高密度な3次元測量が可能

2:3次元測量データによる設計・施工計画
⇒ 3次元測量データから、切土・盛土などの施工量を自動算出

3:ICT建設機械による施工
⇒ 3次元設計データ等によって、ICT建設機械を自動制御し建設現場のIoTを実施

4:検査の省力化
⇒ ドローンなどによる3次元測量を活用した検査にて、検査項目が半減する

i-Constructionのメリット

先に解説したi-Constructionの手順によって、建設現場ではどのようなメリットが生まれるのでしょう。

ここでは、i-Constructionのメリットについて解説します。

時間的なコストが圧倒的によくなる

まずは、トータル的な時間コストが圧倒的によくなることが挙げられます。例えば、最初に行う測量についても、ドローンによる3次元測量となるため、これまで3人必要だった測量現場も1人で完了します。

また、2~3日必要とされていたデータ解析までの測量時間も、数時間で完了してしまいますし、なにより測量会社に委託する必要がないのでコストも抑えられます。

設計図や施工計画もデジタルデータとなるため、切土・盛土などの施工量も解析ソフトによって自動で算出が可能。この部分でも、かなりの時間短縮が可能となっています。

施行自体も従来のアナログチックな施工ではなく、3次元設計データが利用できるのでICT建設機械を自動制御し、正確で素早い施工が可能となっています。さらに、検査も50%は自動化できるため、早く完了できるようになりました。

以上のとおり、i-Constructionでは従来に比べて、トータル的な時間コストが圧倒的に改善される、とても大きなメリットが生まれています。

ICT建設機械の活用で、安全で確実な施工が可能

もう一つi-Constructionのメリットを挙げるなら、ICT建設機械の活用で、安全で確実な施工が可能となることです。

建設機械を人が操縦するには、高い技術が必要であり一朝一夕で身につくものではありません。このような高い技術を身につけるには、豊富な経験が必要となるため時間がかかるデメリットが存在しています。また、高い技術を持った人材の多くが高齢化しており、現場でもローテーションが難しくなっていました。

ところが、i-Constructionでは3次元データを取得することで、ICT建設機械を自動制御することが可能となったのです。人の操縦では高い技術を要する現場でも、ICT建設機械なら精度の高い3次元データさえあれば、難なく施工することができます。

人材不足に悩む建設業界にとっては、救世主のようなものでしょう。

測量業界がザワついた!業界では体制の見直しが始まる

i-Constructionの概要はお分かり頂いたとして、この取り組みが公表された2015年12月から、測量業界はザワつき始めます。

大手の航測会社ではi-Constructionに対しての勉強会が開催され、グループ会社、協力会社の技術者が集められました。

ゼネコンとの協力体制が必須となってくる

大手航測会社の関係者に話を聞くと、当時は何度もi-Constructionの勉強会が開かれて、内容を熟知するようにいわれたそうです。

それもそのはずで、i-Constructionが導入されるとこれまで建設現場の調査測量や事前測量などが発注されなくなるため、ゼネコンとの協力体制が必須となり、これまでの測量会社主導から、建設会社主導に変わってしまいます。

現場で測量を行う技術者も意識改革を行う必要があるために、何度も勉強会が開かれたそうです。

昔ながらの技術者はふるいにかけられる

i-Constructionに対応するには、ドローン測量と測量データを取り扱う解析ソフトやGISを使いこなすことができないと、技術者として生き残れません。昔ながらの丈量図の作成や道路設計に必要な縦横断図を作成していた、地上測量しか行わない技術者は仕事がなくなっていきます。

i-Constructionでは、生産性を向上させるために、施工会社が測量を含めた全てを一貫して行うこととなっています。しかも測量は3次元測量です。なので、GISを自由に扱える技術がないといかに測量士といっても、生き残ることができなくなりました。

測量の発注が変わる

例えば、公共測量にて橋を建設する事業があるとしましょう。これまでなら、基本測量と工事に分けて測量会社とゼネコンに発注されたり、ゼネコンに対して測量と工事を一括発注したりさまざまな形態がありました。これが、i-Constructionでは一貫して行なうため測量は工事に含まれて発注されます。

国土交通省がi-constructionの推進を目指していることから、今後i-constructionが増えていくのは間違いありません。その場合、測量会社が受注したゼネコンから測量業務を受注するためには、測量会社にも変化が求められます。

i-Constructionに対応した設備投資で差別化を図る

測量会社が生き残るために行なった対策は、ドローンによる3次元測量とデータ解析ソフトの開発です。もともと大手の航測会社には、空中写真測量によるオルソ画像作成の技術や、レーザー測量による点群データの解析、MMS測量による3次元データの取得と解析などのノウハウがあります。

これらの技術をi-Constructionバージョンにカスタムして、差別化を図りアピールしています。

測量技術と解析ソフトのセットがマストになった

そして、これまでは現場測量技術さえあればよかったのですが、i-Constructionでは3D解析ソフトがセットになることが求められています。

例えば、A社ではドローンなどで多重ラップ撮影を行ない、解析ソフトによって3Dモデルを作成。そして解析ソフトにて、モデル編集・高度な3D地形解析・3D図化などの、編集や解析ができることが、アピールポイントになっています。

地域の測量会社では対応できないのが現状

写真測量から点群データを生成する技術はSfM(Structure from Motion、多視点画像復元処理)と呼ばれ、世界的にも少数の画像処理解析ソフトウェア会社と研究者に依存しており、一般的に自社開発することは困難です。レーザー測量から点群データを作成する場合には、ドローンとレーザー測量機の初期投資だけで数百万円以上します。

中堅以上の測量会社においては、このような専門会社と協業をすることで自社開発や購入によって、必要なハードとソフトを手に入れることが可能になりますが、小規模な測量会社では、解析ソフトを開発することは無理ですし、ソフト会社から解析ソフトを購入することも体力的に厳しいのが現実です。

その結果、i-Constructionへの参入は難しく、対応できるのは中堅以上の測量会社であることが現実となっています。

測量会社のi-Construction作業の流れを解説

それではここで、測量会社が行なうi-Construction作業の流れを解説しておきましょう。

多くが、i-Constructionに対応した測量業務や建設会社の支援として、ICT土工のための「起工測量」の提供となっています。

起工測量は工事着工前に必ず行うべき測量

起工測量とは、工事の着工前に必ず行なわなければならない測量のことで、着工前の工事現場の形状を把握することで、正確な設計や工事数量の算出が可能となります。

この起工測量では、基準点及び水準点を点検して正確な座標を求めることが必要です。

i-Constructionへの流れは4ステップ

起工測量を含むi-Constructionへの測量のアプローチは、4ステップとなります。

ステップ1:施工計画・準備

現場に最適な3次元測量技術を提案し、施工計画書に必要な「精度確認試験結果報告書」や「飛行計画書」の協議を行います。

そして、工事基準点の設置を行い3D測量による起工測量を実施。作成した3D地形データを基に、平面図・縦横断図などの各種図面を作成します。

ステップ2:施行

3D地形データと3D設計データを照合して土量を計算。マシンコントロール・マシンガイダンス対応のICT建設機械データを作成します。

ステップ3:出来形管理

出来形計測した3Dデータから、出来形管理帳票を作成します。

ステップ4:完成・電子納品

i-Construction専用の電子納品要領・基準に準拠した納品データを作成して納めます。

i-Constructionでのドローン測量が業界の垣根を超えた

ドローン測量はi-Construction以前から存在していましたが、一気に火が付いたのはi-Constructionが要因といっても過言ではありません。

そして、その汎用性の高さから測量業界の垣根を超えて、さまざまな分野でドローン測量による3次元データの活用が広がっていきます。

i-Construction以外でもドローン測量が活用されている

i-Constructionは公共測量に適用されることが多く、国土交通省は取組を推進すべくICT等に関係する基準要領等の制定および改定をしました。最近では地方自治体においても、i-Constructionを適用した案件が増えてきています。

ただ、ドローンによる3次元測量は、建設業界以外のさまざまな分野でも活用されているのが現状です。むしろ、気軽に三次元点群データやオルソ画像を生成でき、地形データを計測できるニーズから、i-Constructionでの利用よりも他分野の方が確実に、ドローンによる3次元測量の活用が多くなっています。

ドローン測量で得られる3D地形モデルは活用方法が無限にある

ドローンによる3次元測量が広く活用される理由に、3D地形モデルが取得できることが挙げられます。

3D地形モデルは、上空からドローンで撮影した画像をX・Yの平面距離だけでなく、Z値となる高さを持つ地形モデルです。画像の中のどの部分を切り取っても、3次元データを取得できるので、面積・体積を自動で抽出できますし、航空写真なので視覚的にもとても分かりやすいメリットがあります。

木に覆われた土地形状も3Dモデル化できるので、メガソーラーの建設時の測量にも利用されています。

3D地形モデルは、利用者のアイデア次第で活用法は無限に広がるといってもよいでしょう。その結果、さまざまな分野でドローン測量が活用されるようになっているのです。

ドローン測量では解析ソフトが効率化のカギを握る

さまざまな分野で利用されるドローン測量ですが、ただドローンがあれば3次元測量ができる訳ではありません。

これは、i-Constructionで行う最初のドローンによる3次元測量も同じです。一定の撮影方法を守る必要はありますが、基本的にドローンはフライトさせるだけです。

肝心なのはその画像データを3次元化して、3Dモデルを作成する解析ソフトにあります。

写真測量ができるドローンを使うことが必須となる

先にドローンによる3次元測量を行うには、ドローンはフライトさせるだけとお伝えしていますが、オーバーラップ撮影ができ、画像の位置情報を取得できるなどの写真測量に適したドローンを使うことが必須となります。

適したドローンさえ購入できれば、最初に操縦と撮影方法の教育を受けることで、あとはフライトアプリを使って撮影計画を設定するだけでドローンが自動航行し、三次元化するための画像データを取得できるようになります。

解析ソフトのスペックで活用データに差が出てくる

ミリ単位の精度は必要なくとも、それなりの精度がなくては正確な3Dモデルの作成はできません。従って、ドローンと解析ソフトのスペックによって活用データに差が出てしまいます。

ドローンや搭載されるカメラの性能が低い場合、位置情報の精度が悪かったり、解像度が低いために低高度で飛行させなければ、高解像度のデータを取得することが困難になります。起工測量の場合は±10cm、出来形管理の場合±5cmの精度が必要となることから、ドローンやカメラの性能が低ければi-constructionでの活用はできません。

作成できる3Dデータの種類が少ないと、活用範囲が狭くなってしまうのも事実です。例えば、オルソ画像しか作成できないAのソフトと、オルソ画像・DSM・点群データが作成できるBのソフトとでは、当然ながらBの解析ソフトの方がデータの活用法が広くなります。

また、クラウドを利用するのかパソコン内で処理するのかで、利用する便利さも変わってきます。

スペックの高いパソコンで処理させるとなると、そのパソコン内でしかデータの利用や加工はできません。一方で、全てクラウド上で解析が行なわれるのなら、複数のユーザーでデータ共有が可能となり現場効率もアップします。

このように、活用するドローンの種類と解析ソフトのスペックが、作成後のデータ活用に大きく影響してくるのです。

「くみき」は地形データを自動生成でき、誰もが使える優秀な解析ソフト

ここまでで、i-Constructionをスムーズに実行するには、ドローンとスペックの高い解析ソフトが必要であることがお分かり頂けたと思います。

そこでスペックの高い解析ソフトである「くみき」を、ご紹介しましょう。「くみき」は専門的な知識を必要とせず、ドローンで撮影した画像データをクラウド上にアップロードするだけで、オルソ画像や3D点群データなどの地形データを自動生成できる、優れた機能を搭載しています。

誰もがカンタンに操作できるので、専門家は不要

優秀なスペックの高い解析ソフトであっても、3次元データを生成させる際に専門の知識が必要なケースもあります。

そうなると誰もが使えるソフトではなくなるので、専門家が不在であればお手上げです。

その点「くみき」は、カンタンな操作方法で誰もが使えるソフトなので、専門家は不要です。しかも、専用の高スペックパソコンなども不要なので、コストパフォーマンスにも優れています。

「くみき」の12の主要機能をご紹介

ここではカンタンに「くみき」で活用できる、12の主要機能をご紹介します。

No 機能名称 機能紹介
1 地形データ自動生成機能 ドローン画像からオルソ画像・DSM・3D点群データを自動で簡単に生成
2 各種ドローン測量機能 WEB上で距離・体積・断面などの地形計測を、誰でも直管操作できる
3 地図上コンテンツ管理機能 スマホやドローンで撮影した写真・動画を、Web上で見やすく管理できる
4 タグ・ラベル機能 タグやラベル機能で、現地データや関連資料を容易に整理・検索が可能
5 多時期位置補正機能 GCPや測量機器を使わずに異なる時期の画像や位置ズレを楽々補正する
6 多時期比較機能 最大4時期の同一エリアの経年変化や差分の計算も、同じ画面で簡単に比較分析できる
7 地形データインポート機能 他ソフトで生成されたオルソ画像や点群を取り込み、一元管理が可能になる
8 GCPインポート機能 座標点の位置情報を取り込み、正確な位置情報を持つ地形データを生成できる
9 地形データ出力機能 地形データをGeoTiff、Laz・Las、CSVでダウンロード、専用ソフトで編集も可能
10 スマホアプリ連携機能 現場から写真や動画をすぐに共有したり、俯瞰のオルソ画像を現地で確認することも可能
11 フォルダ自動振分け機能 複数エリアの画像データを全部まとめてアップロードしても、AIが自動でフォルダ分けしてくれる
12 ダッシュボード機能 ファイルアップロード数やオルソ画像生成数などのご利用状況を、1つの画面に集中表示できる

GCPインポート機能は特におすすめポイント

「くみき」の主要機能の中で、最もおすすめな機能は「GCPインポート機能」です。 GCPとはグラウンドコントロールポイントの略で、座標が分かっている地上の点のことです。一般的な飛行機などによる空中写真測量では、対空標識と呼ばれるGCPを地上に配置し、撮影後に座標値を与えて標定を行ないます。

ただし、一般的な航空写真の標定には、3次元で写真を見ることができる専用の機器やソフトが必要であり、さらに経験を積んだオペレーターでないと正確な座標付与ができません。

「くみき」ではGCPの座標情報をCSVでアップロード、もしくは画面上で入力するだけで、正確な位置座標を持つ地形データを生成できます。

まとめ

i-Constructionでは最初の工程に、ドローン等による3次元測量が必須となっています。このことが、ドローン測量を普及させる要因になったことは間違いないでしょう。

i-Constructionへの適用を目指しドローン測量の精度を向上させてきた結果、ドローンによる3次元測量は建設業界だけでなく、あらゆる多様な業界で活用されるようになっています。また、建設業界でも従来の測量からドローン測量に置き換わってきました。

建設現場でのICT建設機械の導入は、これから必須となり高性能なICT機械が登場することとなるでしょう。そして、ドローン測量による精度の高い3次元データが求められます。

そのためには、ドローンの精度向上はもちろんですが、解析するソフトも高いスペックが必要となります。

「くみき」は、i-Constructionの起工測量・出来高計測に対応する精度で測量データを生成する機能も有し、生成したデータをダウンロードし活用することができます。

IT導入補助金も利用できるので、気になる方はぜひスカイマティクスにご相談ください。