2021年12月24日

災害分野でも役にたっているDSMとは?
最先端の3D測量技術について詳しく解説!

DSMは表層の高さを表現して、3次元モデルを作る技術です。その用途は、さまざまな分野に利用されていて、防災分野では地すべり危険斜面の現地調査に利用され、災害予測や減災に役立っています。さらには、3次元モデルを利用した立体地形図の作成など、さまざまに活用されるのがDSMです。

これまで2次元でしか表現できなかった地図を、表層の高さを利用して立体化できるメリットがDSMにはあるからなのです。今回は、そんな便利なDSMについて詳しく解説しましょう。

DSMとは!?XYZの3次元データ

DSMとは「Digital Surface model」の略で、日本語では「数値表層モデル」もしくは「デジタル地表モデル」と呼ばれています。また、似たような言葉でDEMがあります。DEMは「Digital Elevation Model」の略で、「数値標高モデル」と呼ばれます。

同じようにイメージされがちですが、3次元データの使い勝手から言うと、DSMが勝っています。DSMとDEMとの違いをよく質問されますが、なかなか理解してもらうのが難しいです。

DEM「数値標高モデル」は、地表面を3次元化する

DEMは、空中から見た地表面のみを3次元化します。なので、その上に設置さされている電柱や建物などは省かれて作成されます。国土地理院が公開している、地理院地図3Dを使ってDEMをカンタンに説明しておきましょう。

次のエリアの地図をDEM化して、地図に高さを与えると【画像2】のように立体的に見ることが可能になります。


出典:国土地理院 電子国土WEB

この範囲の地形を、3Dで見てみると次のような見え方になります。

【画像2】


出典:国土地理院 電子国土WEB

このように、標高の高い山は立体的に表示されているのがお分かり頂けるでしょう。ただし、この高さは山にある樹木の高さでなく、地表面の高さを利用して立体化させています。

DSMは地表・建物・樹木など表層面を3次元化する

一方でDSMは地表・建物・樹木など地表面上に存在する全ての物体を3次元化します。なので、DEMよりもよりリアルな状況を創り出すことが可能となっています。

DSMの説明には先のDEMとの比較を行うのが、最も理解しやすいと思いますので、国土地理院地理地殻活動研究センターのツイートを利用させてもらいましょう。


この画像はツイートの画像を拡大したものですが、左のDEM画像には建物は表示されていません。ですが、右のDSM画像には建物や道路までもハッキリ表現されています。これが、数値標高モデルDEMと、数値表層モデルDSMとの大きな違いです。

くみきのDSMもさまざまに加工・利用できる

先の解説で、DEMとDSMとの違いはお分かり頂けたでしょう。ここでは、くみきのDSMをご紹介します。

シームレスなオルソ画像の作成


広範囲に渡る何枚もの写真をオルソ化して、つなぎ目が分からないシームレスなオルソ画像を作成できます。身近な利用としては、テレビ番組の報道やチラシなどに利用されています。

3D点群データ


1点1点がX/Y/Zの3次元座標を持っているので、現場を立体的に見ることが可能です。

DSMによる数値モデル化


先で解説した数値表層モデルのDSM画像です。建物などの高さが取得できるので、標高ランク別に着色すると真上からみても、高さの違いを把握することが可能です。

DSMメッシュ


DSMと同じく、建物や樹木などの地物を含めてそれぞれの表層面を数値標高モデル化し、さらにタイル状に表現した標高モデルです。高低差を細かく確認する際に最適な3次元モデルとなります。

DSMはあらゆるシーンで利用される

DSMは、地表面の全ての標高データを取得して数値化できます。ですから、さまざまなシーンで利用が可能となります。ここでは、くみきによるDSMの活用方法をご紹介しましょう。

撮影すれば勝手にDSMが作れるわけではない!

DSMの活用法をご紹介する前に、DSMを作るにはシステムが必要であることを知っておいて頂きたいのです。単純に、航空写真を撮影すればDSMが作れるのではく、GISシステムを使用して写真に標高地を格納する作業が必要となります。

地表面の高さ、橋梁の高さ、川の深さ、建物の高さ、樹木の高さなど、写真に写るあらゆる地物に標高地を格納しなければ、DSMは作ることができません。これらの作業を、一つ一つ手作業で行うとどうなるでしょう。1km四方の写真を処理するのに、1ヶ月以上は時間を要してしまいます。

そこで、くみきでは空中写真をシステムにアップロードするだけで、自動的にDSMを作ることのできる機能を搭載。人海戦術では、途方もなく時間のかかる作業を、一瞬で処理することが可能です。

航空写真と、優秀なシステムの両方が存在してこそ、DSMを便利にカンタンに活用することができるのです。

活用シーン1:圃場の均平調査


圃場の均平化は、日本全国で行われています。その理由は、圃場の高低差によって水の流れが滞留することで、作物の育成に関わり、病気の発生原因になるなど、さまざまな問題が発生するからです。

昔では、圃場全体のレベル測量やTS測量にて圃場内の高さを確認し、均平化を行っていました。調査測量だけでも数日から数週間必要でしたが、ドローンで撮影した空中写真をくみきで利用すれば、DSMにて広範囲な圃場を素早く計測することが可能です。

活用シーン2:水はけ調査


ゴルフ場や球場、競技場では水はけ管理の目的で高低差を調査します。この調査も、従来ではレベル測量や、TS測量の地上測量にて行われていました。ですが、空中写真を利用するリモートセンシング技術を利用して、DSMにて高低差をカンタンに把握することが可能です。

しかも地上測量では、点と線のデータしか取得できませんが、DSMなら面で取得できるので、ゴルフコース単位、球場単位で管理することも可能となります。

活用シーン3:災害時の水流調査


大雨や冠水時において、高低差から水流を事前に調査・把握しておくことで、災害時に被害を最小限に抑える、防災分野でも活用されています。DSMのメリットは、広範囲を面で捉えることができる点にもあります。

道路単位、区画単位など排水エリアを設定して調査、管理ができるので非常に便利です。

活用シーン4:道路の高低差調査


道路の平坦性を調査して、交通事故防止や工事の事前段階での現場調査シーンにも活用されています。ただし、公共測量工事において求められるmm単位の精度が必要な案件では、ドローン測量の精度が当てはまらないので、利用できない場合もあります。ですが、民間が行う開発道路の高低差調査には十分利用が可能です。

近年では、宅地開発を行う際には必ず雨水の排水設備を、設置しなければなりません。開発地内に溜まる雨量と、その雨量を排水する側溝の整備が求められます。

そのような排水設備を設置する際の、事前調査としてDSMを活用するシーンも増えています。

DSMは基本的に航空レーザー測量で取得する

DSMを作成するには、航空写真と優秀なシステムが必要であると前述しました。もう少し詳しく解説すると、航空写真測量は基本的に「航空レーザー測量」にて行われます。つまり、DSMを取得するには、飛行機とレーザースキャナが最低限必要となるのです。

ここでは、DSMを作成するメカニズムを、詳しく解説しておきましょう

飛行機で行う航空レーザー測量とは!?

航空レーザー測量は、「レーザー測距・GNSS・IMU」の3つの技術があわさって行われています。これに加えて、セスナタイプの飛行機が必要です。まず、レーザー測距とは、飛行機に搭載したレーザースキャナを使って、地表面を計測することです。

レーザー測距(レーザースキャナ)

レーザースキャナは、レーザー光を発射して地表から反射して戻ってくる時間差を調べて、距離を決定する装置です。レーザー光を1秒間に50,000~100,000回発射が可能で、地表で50~60cm間隔、またはそれ以下の間隔でも計測が可能になっています。

GNSS受信機

GNSS受信機は、航空機のX・Y・Zの3次元の座標を取得する装置です。GNSSとは、「Global Navigation Satellite System」の略で、日本語では「全球測位衛星システム」と呼んでいます。地球上空を周回している衛生のことで、米国のGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、ロシアのGLONASS、欧州連合のGalileo等の、衛星測位システムの総称です。

GNSSを利用している身近なモノは、スマートフォンとカーナビゲーションでしょう。スマートフォンで撮影した写真には、位置情報が格納されます。この位置情報は、GNSSから取得しているのです。

GNSS受信機では、地上の測量と同様に高精度な位置測定が可能となっています。

IMU(慣性計測装置)

IMU(慣性計測装置)は、カンタンに言うとジャイロを改良したもので、飛行機の状態や速度を測る装置です。このIMUにて、レーザー光の発射された方向を、正しく補正することを可能にしています。

レーザー測量で取得するのは点群データ

先のレーザースキャナなどの装置にて取得されるデータは、点群データとなります。取得している1点1点にX・Y・Zの座標値が格納されているので、この点群データを解析することで3次元モデルを作ることができます。

ですが、その解析には専用のソフトが必要です。1秒間に50,000~100,000回のレーザー照射を行っているので、その回数分点データを取得している訳です。しかもレーザーは水面を苦手としているので、静水面では正確なレーザー取得ができず「欠測」になるケースが多くあります。

樹木が茂った山などでは、地表面のデータと樹木のデータが混在して、これら混在したデータをより分ける作業も必要となります。

単にレーザー測量しただけではダメで、測量後の専用ソフトによる解析が重要となってきます。

DSMモデルを作成

先のソフトによる解析を経て、DSMモデルが完成します。DSMはレーザー測量で取得したあらゆる地物の標高をモデル化しています。道路・河川・建物・樹木まで3Dモデルとして表現が可能です。

DSMモデルにフィルタリングと呼ばれる作業を行い、建物や樹木の標高を取り除けば、地表面のみの標高が取得可能となり、DSMからDEMを作ることができます。

機材やソフト、解析費用など航空レーザー測量は高額になる

航空レーザー測量を行うことでDSMを作ることはできますが、ここまでの解説でお分かりの通り、高額な費用が必要となります。「レーザー測距・GNSS・IMU」の技術を備えた機器を準備するだけで、高額になりますし、その後の解析にも工数がかかります。

公共測量にて公費で市域全体のDSMを作る場合などでは、予算をかけることができますが、民間で1km四方程度のDSMを航空レーザー測量で作るには、高額過ぎて実施は不可能でしょう。

ドローンで撮影した空中写真からDSMメッシュが作成可能

航空レーザー測量でのDSM作成は、高額な費用が必要となります。その理由は誰もが所有していない、特殊な機器を必要とするからでした。では、セスナ型の飛行機の代わりにドローンは利用できないのでしょうか。

実は既にスカイマティクスでは、飛行機の代わりにドローンで空中写真を撮影してDSMを作成する、ドローン計測サービス「くみき」を開発・運用しているのです。

航空レーザー測量のように高額な費用を必要とせず、解析する専門職も不要。誰もがカンタンに利用できる測量サービスとなっています。

誰でもカンタンに利用できるクラウドサービス

これまでも飛行機の代わりにドローンで撮影した空中写真を利用して、3次元モデルを作成するシステムは複数ありました。ですが、どのシステムも撮影データを処理して解析するには、高スペックのパソコン、測量とシステムに高い知識をもった専門職が必要で、誰もが利用できるシステムはなかったのです。

そこでスカイマティクスでは、誰もがカンタンに利用できる、ドローン測量サービス「くみき」を開発しました。

このサービスの最も大きな特徴は、とにかくカンタンであることです。手持ちのドローンで撮影した画像をクラウドにアップロードします。それだけで、地形データを自動で生成。利用するシステムは、直感的な操作画面となっていて誰もがカンタンにシステム内で計測、現場把握、経年変化の抽出までも可能なサービスです。

くみきのシステムを使えば、自動でオルソ画像、点群データ、DSM、DSMメッシュデータを作成できることが可能となるのです。

くみきの使い方!超簡単操作をフローで紹介

クラウドサービスくみきは、本当に超簡単に利用できます。画像のアップロードからデータ確認まで、たったの3ステップ!

ステップ1:お客さまにて撮影したドローンの画像データをアップロード
ステップ2:クラウドで地形を自動で作成
ステップ3:完成したデータをクラウドで確認!直ぐに計測可能

複雑な地形の堆積計算も可能

オルソ画像を利用して、傾斜や高低差のある複雑な地形においても、土量などの体積計測を可能にしています。斜面での土砂の体積計測には、斜距離で計測したデータを平面距離に置き換えるなど、複雑な補正計算が必要です。

しかも現地でのTS測量では、多くの測点から計測を行い、補正計算を経てやっと体積を確定できます。

くみきでは、オルソ画像を使って計測できる独自の計測システムを搭載。基準面を自由にかつ、カンタンに設定できて短時間で複雑な地形の体積計算を行えます。

傾斜地や高低差のあるエリアの体積量の計測

このように斜面や地形に高低差のある個所の土量・産業廃棄物量・棚卸量などを、画面上で計測可能です。

平面と傾斜地に跨るエリアの体積量の計測も可能

平面と傾斜地に跨る土量や産業廃棄物量・棚卸量・斜面で崩壊した土砂量などを、画面上で計測できます。通常このように、平面と斜面が混在する個所の体積測量には、斜面部と平面部に分割して計測して補正をかける手法で行われます。

くみきでは、そんな面倒な計算を必要とせず、オルソ写真から計測できる機能を搭載しています。

独自の位置補正機能で二次期の比較が可能

時期の異なる場所を比較する際には、それぞれの時期の写真を合わすために「標定」と呼ばれる作業が必要となります。標定するには、予め標定点を設置して二次期の各写真に同じ座標を持つ、標定点が写っている必要があります。

また、二次期の写真の中から標定点として利用可能な地物を選択して、標定を行う必要があります。前者の方法では予め計画が必要となり、さらに標定点の座標を取得するための地上測量も必要となってきます。

後者の方法では、二次期の写真を見比べて共通の標定点を探す作業が人の目で行われるので、オペレーターの経験や知識に成果が左右されやすくなってしまいます。

くみきの「位置補正機能」ではオルソ画像・点群データから、自動で画像同士の特徴点を見つけ出し、ぴったりと重なるように補正することが可能です。なので、高価な測量機器を使った複雑な位置補正や、標定作業を行う必要がなくなります。

この「位置補正機能」は、くみきのプレミアムプラン限定となっています。

二次期の写真から補正可能な特徴点を自動で抽出できる

共通の標定点がなくても、特徴点同士を自動で抽出し位置補正することで、二次期の正確な計測が可能となっています。

この位置補正の技術があれば、ドローンでの空中写真で二次期の比較が可能となり、従来の費用を抑えることが実現します。

くみき独自の範囲指定DSM

くみきにはDSMをより詳細に表示できる「範囲指定DSM」機能が搭載されています。次の画像を利用して、機能を紹介しましょう。

DSMの表示は、地表面・建物や樹木の高さを含んだ地表モデルとなります。ですから、通常の表示では上記画像左側のように、地表や樹木など範囲全体の高さを、着色によって色分けしたモデルとなります。画像範囲内の地形の高低差を一括で示すため、広大かつ高低差がある地形の場合、特定の場所の高低差が分かりづらくなります。

ところが、くみきの「範囲指定DSM」を利用すると、画像右側のように、任意の個所をポリゴンで指定することで、より詳細な地表面のデータの生成が可能となります。

画像左右の状態を見比べるとお分かりのように、右側の範囲指定DSMモデルでは、指定した狭いエリア内の高低差も詳細に表現されますが、左側の全体モデルでは、マップ全体の高低差の影響を受けるため、該当箇所についてほぼ同じ高さで表現されてしまい高低差があることは一見分かりません。更に、全体モデルの場合だと着色モデルのON・OFFを切り替えないと、元の地形確認ができません。ですが、ポリゴンで範囲指定したDSM強調表示だと、地形を確認しながら必要な個所の標高データを取得することが可能となり、作業の効率化にも有効です。

これからはドローン測量で3次元モデルを取得できる

3次元モデルを取得するには、多額の費用が必要でした。特に地物全ての標高データを取得できるDSMのモデルを作るには、航空機によるレーザー測量が必須であり、高額な費用をかけないと取得できない特別なデータでした。

ところが、ドローンの登場と優秀な解析システムによって、飛行機の代わりをドローンで行うことが可能となり、解析も優秀なシステムによって誰でもカンタンに3次元データを取得・利用できるようになっています。

スカイマティクスが提供する、ドローン計測サービス「くみき」が、正に、誰もがカンタンに使えるサービスなのです。数ある測量サービスや測量システムの中でも、くみきほどユーザーライクな測量サービスは存在しないでしょう。

DSMモデルや3次元モデル、オルソ画像を使ったシステムをお探しの方は、スカイマティクスに相談することをおススメします。