最新の航空写真測量はシンプルになった!?
メリットや使い道、ドローンによる航空写真測量も!
目次
航空写真測量とは!?一昔前は飛行機が必須だった 行政で利用される航空写真測量の活用法 オルソ画像を取得するには航空写真測量が必須 オルソ画像の作成方法 ドローンで行う航空写真測量を徹底解説 スカイマティクスが提案する「Autel Explorer」 ドローンで撮影した空中写真を自動でオルソ化が可能
航空写真測量は、昔から存在している測量技術の一つです。地図の作成や災害の状況、土地利用の変化などに用いられてきていますし、これからも利用され続ける測量技術でしょう。
航空写真測量には、セスナ型の飛行機と撮影用のカメラや機材が必要です。ただ、近年ではドローンの登場によって、ドローンによる空中写真測量が普及してきています。
そこで、航空写真測量のメリットや使い道、これからのドローンによる航空写真測量について、詳しく解説していきましょう。
航空写真測量とは!?一昔前は飛行機が必須だった
冒頭にお伝えしている通り、航空写真測量には飛行機が必要でした。セスナ型の飛行機に空撮用のカメラや機材を搭載して、飛行ルートを予め選定して空中から撮影を行っています。
ここでは、そんな航空写真測量について解説しましょう。
ドローンの登場で飛行機は不要になるのか?
近年の航空写真測量では、飛行機の代わりにドローンで空中写真を撮影するケースが増えてきています。国土交通省が規定する公共測量作業規定でも、「UAV を用いた公共測量マニュアル」が策定されて、公にUAVでの空中写真を利用可能になっています。因みに、UAVとは「Unmanned Aerial Vehicle」の略で、ドローンを含む無人飛行機を意味しています。
では、国もドローンでの空中写真測量を認めているなら、航空写真測量は飛行機からドローンに全て変わるのか!?と言うと、そうではありません。
ドローンで行える空中写真測量にはやはり限界があり、飛行機による航空写真測量は今後も必要とされています。
どのようなシーンで飛行機による航空写真測量が行われるのか
それでは、どのようなシーンの航空写真測量で、飛行機が必要となるのかを解説しましょう。飛行機で撮影する空中写真のメリットは、撮影高度にあります。ドローンは航空法で150m以上の空を飛行することが禁止されています。
撮影高度が高くなると言うことは、一度に撮影できる範囲が広くなるメリットがあります。また、一日で撮影可能な範囲にも大きな違いがでてきます。例えば、富士山の山頂が写る空中写真を撮る場合、3,776m以上の高度が必要なので、約4,000mの撮影高度が必要となります。
このように、高高度の撮影が必要な場合は、飛行機での空中写真撮影が必要となります。因みに次で、ドローンによる高度別の撮影範囲を計算してみましょう。
ドローンによる高度別の撮影範囲
ここではドローンによる、高度別の撮影範囲を解説しましょう。飛行機では、数千メートルもの高度から撮影が可能ですが、ドローンでは原則150mが最高高度となっています。
そこで、ポピュラーなドローン「Phantom4 Pro」のスペックで、高度50mと150mでの撮影範囲を計算してみました。
【Phantom4 Proのカメラスペック】
センサーサイズ(1インチ):水平13.2mm×垂直8.8mm
焦点距離:8.8mm(35mm判換算24mm)
【撮影範囲の計算式】
・垂直撮影範囲 (m) = 高度 (m) ×センサー垂直サイズ (mm) /レンズ焦点距離 (mm)
・水平撮影範囲 (m) = 高度 (m) ×センサー水平サイズ (mm) /レンズ焦点距離 (mm)
【高度50mでの撮影範囲の計算】
・垂直撮影範囲 (m) =50m×8.8mm/8.8mm=50m
・水平撮影範囲 (m) =50m×13.2mm/8.8mm=75m
50m ×75m=3,750㎡=0.00375平方キロメートル
【高度150mでの撮影範囲の計算】
・垂直撮影範囲 (m) =150m×8.8mm/8.8mm=150m
・水平撮影範囲 (m) =150m×13.2mm/8.8mm=225m
150m ×225m=33,750㎡=0.03375平方キロメートル
このように、同じドローンでも高度50mよりも150mの方が、撮影範囲は広くなります。ですが、ドローンの場合は最高高度が150mなので、撮影範囲は225m×150mが限界となります。
もっと高い高度から撮影のできる飛行機での撮影の方が、より広範囲をカバーできることがお分かり頂けるでしょう。因みに計算にはドローンの性能と言うよりも、Phantom4 Proに搭載されているカメラのスペックが重要となっています。
逆に工事現場や採掘場など、狭い範囲で空中写真を撮影する場合は、ドローン撮影の方が向いていると言えます。
行政で利用される航空写真測量の活用法
ここでは、飛行機による航空写真測量を、行政がどのように利用しているのかを解説しましょう。「まぁ、大体そうだよね」と誰もがうなずくケースと、「エッ!そんなことにも利用しているの!?」と、驚くケースの2種類を解説しましょう。
ケース1:地図の作成や道路管理に利用している
日本には国土交通省が所管する「国土地理院」があり、測量に関しての全てを管理しています。全国の1/2,500の地形図を作成していて、最近では「地理院地図(電子国土WEB)」で、地図を無料公開して印刷までもできるようになっています。
国土地理院が作成する地図は、1/2,500と縮尺が大きく、自治体が利用するには物足りない大きさなのです。自治体で求められる大きさは、1/500や1/1,000など小さな縮尺です。地図は縮尺の分母が、小さくなればなるほど精密になってきます。
我がまちの正確で詳細な地図を作成するには、1/500または1/1,000の縮尺が必要となります。これらの縮尺の地図を作る工程を、カンタンに説明しておきましょう。
自治体による地図の作成手順
ステップ1:飛行機による空中写真撮影
ステップ2:各写真の標定
ステップ3:オルソ画像作成
ステップ4:写真を基に図化(デジタル化)
ステップ5:地図記号などの編集
ステップ6:デジタルマップの完成
かなりザックリしていますが、概ねこの手順で地図の作成が行われています。
道路を管理する道路台帳に活用
先の手順で作成された地図は、道路を管理する道路台帳や、カーブミラーやガードレール、白線などの道路付属物の管理に活用されます。1/500の航空写真では、道路に設置されているカーブミラーまでもしっかり視認できますし、ガードレールも見て取れます。
また、側溝もオープンになっているのか、グレーチングなのか、石フタなのかまでもわかるのです。この特性を利用して、道路を管理します。先ず路線ごとに分類して、その路線内で区間ごとに分類。区間は、道路の幅員が変わるところで分けていきます。そうすることで、道路を補修する際のアスファルトやコンクリートの必要な量や工事にかかる費用など、さまざまな道路の管理に使われます。
カーブミラーやガードレールなどの道路付属物も、路線で管理できるので取替のスケジュールや費用の算出に役立っています。
ちょっと驚きの航空写真の活用法とは
今度はちょっと驚きの、航空写真の活用法を解説しましょう。みなさんは固定資産税と呼ばれる税金はご存じですよね。役所では、税務課、資産税課などと呼ばれる課が、固定資産税を担当していますが、税金を決める際の大原則は「公平課税」です。
例えば、同じ土地の広さの建売住宅を購入した、Aさんと、Bさんの固定資産税の金額は一緒でなければなりません。一方で、同じ大きさの建物を所有しているのに、税金の金額でなく、税金自体がかかっていない建物も存在します。それって不公平ですよね。
例えば、自分が所有する庭に、子供の勉強部屋を増築したとしましょう。建物は、基礎から全てYouTubeを見ながら自分で建てました。増築した部屋の大きさは20㎡あります。
この場合は、建築確認が必要で登記の届け出も必要になります。ですが、自分で建てているので届出は一切行っていないのです。このようなケースでは、固定資産税は徴収されません。増築された建物自体の存在を、知られていないからです。
また、自分が所有する畑を更地にして、子どものために住宅を建てたとします。この時に、既にリタイヤした元大工さんに頼んで、内緒で建築してもらいました。この場合も、届出をしていないので、固定資産税は徴収されません。
このように、役所に知られることなく増築や新築されるケースは、非常に多く見られます。ですから自治体では、数年に1回、多いところでは毎年、「客体異動判読」を行っています。
土地の利用状況が前年または数年前と変わっている箇所を、最新の航空写真と比較して判別します。例えば、以前の土地では畑だったのが、最新の航空写真では住宅になっているところは、確実に抽出します。
家屋についても、以前の家屋と形状が異なる、屋根の色が全く違う、小屋らしき建物が増えているなど、最新の航空写真と比較して違う家屋を抽出します。
この作業を行うことで、先に例として挙げた勝手に増築した建物や、内緒で建てた住宅も見つけることができて、現地で確認して課税されることとなります。このように、不公平税制を解消する方法としても、航空写真は活用されています。
因みに、増改築で課税対象となるのは、10㎡以上の建物です。車1台分のガレージや、壁のないカーポートは課税対象から除外されます。
オルソ画像を取得するには航空写真測量が必須
ここまで解説してきた、自治体が作成する航空写真やデジタルマップも、撮影した写真をオルソ化しないと利用はできません。地図を作るなら、オルソ画像は必須ですし、写真同士の比較も正射投影されたオルソ写真でなければ、建物の比較を行うことは不可能なのです。
逆の言い方をすれば、オルソ画像を取得するには航空写真測量が必須となる。と言うことになってきます。そして、3次元の地図データを作るには「図化」と言う作業が必要となり、この図化作業も航空写真測量の一部となっています。
航空写真には撮影コースが重要・オーバーラップとサイドラップ
航空写真を撮影する際には、撮影コースが重要になってきます。単純に飛行機を真っすぐ飛ばすのでなく、行ったり来たりするように飛ばなくてはなりません。その理由は、航空写真にはサイドラップとオーバーラップが必要となるからです。
基本的にオーバーラップは60%、サイドラップは30%必要とされています。オーバーラップとは飛行機が進む方向で、撮影する各写真が60%重なるようにシャッターを切る必要があります。サイドラップとは、隣り合うコースで各写真が30%重なるように、シャッターを切らねばなりません。
オーバーラップは進行方向で60%写真が重なるよう撮影する
出典:国土地理院の取り組む教育支援の説明会
画像のように撮影する写真の範囲が、飛行機の進行方向に60%重なるように撮影することを、オーバーラップと呼んでいます。この重なりのお陰で、地上をより立体的に見ることができて、オルソ写真を作る際に必要な高さを計測しやすくなってきます。
サイドラップは隣り合うコースで横方向に30%重なるよう撮影する
出典:国土地理院の取り組む教育支援の説明会
画像のように、撮影コースはある一定の距離でUターンを繰り返しながら撮影します。Uターンして先のコースで撮影した写真範囲が、横方向に30%重なるように撮影することを、サイドラップと呼びます。
オルソ画像の作成方法
出典:国土地理院 オルソ画像について
オルソ画像は、オーバーラップ60%・サイドラップ30%で撮影された写真を基に、正射変換して各写真を結合させて作成します。撮影した写真を正射変換するには、空中写真上の位置と地上の水平位置を、対応させることが重要となります。
正射変換には、3次元の数値標高モデル(標高データ)を用いて変換します。航空レーザ測量データや空中写真を用いた、自動標高抽出技術などにより正射変換に用いる数値標高モデルを作成。撮影した写真1枚ごとにそれぞれ正射変換を施して、正射変換された写真をつなぎ合わせることでオルソ画像を作成しています。
標定点の設置
出典:国土地理院 オルソ画像について
オルソ画像に正確な水平位置と高さを与える方法として、空中写真上で明瞭に確認できる個所に水平位置と高さの基準となる、標定点を設置します。空中写真上で明瞭に確認できる個所とは、マンホールや構造物の角などで、設置後にTS測量またはGPS測量で、標定点の座標(X・Y・Z)を取得しておきます。
数値標高モデルの作成
出典:国土地理院 オルソ画像について
精密なオルソ画像を作成するには、高い精度の計測が必要となります。デジタルステレオ図化機などの画像処理装置に、空中写真撮影した各写真とGNSS/IMU装置で計測した、各空中写真の外部標定要素、水平位置と高さの基準となる地上測量で取得した、標定点の座標データなど、各種データを取り込み、撮影区域全体に統合して同時調整を行います。
同時調整が完了したら、写真測量による空中写真の立体視による図化や、重なりあう空中写真に写った情報を比較して、画像上の位置から地物の標高を自動的に計算して、画像上の各地点の標高値を計測します。
これらの計測点のうち、隣り合う計測点3点をむすんで三角形「TIN(Triangulated Irregular Network)」を作成し、標高を表した数値標高モデルを作成します。
以上の作業を経て、オルソ画像の完成となります。いかに面倒で時間のかかる作業であるか、お分かり頂けたでしょう。
図化作業は専門的なオペレーターでないと行うことができない
先の正射変換した写真を図化にて行う同時調整は、写真に写る地物へ座標値を与える作業となります。先ず、立体視と呼んでいるステレオ写真を立体に見ること自体が必要となり、立体視を取得するまでに、かなり時間を要します。
時間をかけても人によっては、立体視ができない人もいますし「逆視」と呼ばれる、高さが逆に見える人もいます。この図化が上手くできなければ、精度の高いオルソ画像を作ることができません。
TINの作成は、図化作業で言うブレークラインがしっかり取得できれば、自動で発生させることができます。もしも、ブレークラインがきちんと取得できていないと、高さがねじれたり、おかしな面ができたりして、ブレークラインの取得をやり直す必要があります。
ですから図化作業は、経験を積んだ専門的なオペレーターでないと、行うことができない作業なのです。
ドローンで行う航空写真測量を徹底解説
飛行機による航空写真測量にて、オルソ画像を作成する手順は先に解説した通りです。「面倒である」ことと「費用がかかる」ことはお分かり頂けたはずです。
ここでは、ドローンによる航空写真測量を解説します。先に解説した通り、ドローンでの航空写真測量では、広範囲の測量は適していません。ですが、狭い範囲のオルソ画像を作成するには、飛行機を使うのはナンセンスです。
そのような場所では、ドローンによる航空写真測量がベストとなってきます。
基本的なフライトやラップは飛行機と同じとなる
ドローンで撮影する際にも、既に解説したオーバーラップやサイドラップは必要です。なので、飛行コースもUターンを繰り返しながら撮影していきます。
ドローンの場合は、条件によって異なりますが、基本的にはオーバーラップ85%以上、サイドラップは75%以上必要です。また、撮影コースは3コース以上、1コース当たり4枚以上の画像が必要となります。
上記の画像の条件で撮影すると、青線で囲まれた緑色の範囲がオルソ画像を作成できる範囲となります。
ドローンでの航空写真測量の注意点
飛行ルートに樹木などの障害物がある場合は、できるだけ障害物に近づく機会を減らすコース選定が大切になります。この場合、障害物に接する距離よりも回数を重視します。
次の画像のように、障害物に接する距離が長くても、接触回数が1回の右側と、接触距離が短くても回数が2回となる左側とでは、右側のコースの方が推奨されます。
スカイマティクスが提案する「Autel Explorer」
スカイマティクスが提案する「Autel Explorer」は、ドローンで行う航空写真測量をカンタンに行うことが可能となっています。
撮影領域を設定すると、撮影コースが自動で設定されます。その後、撮影高度を設定し、オーバーラップ&サイドラップを設定。現場の状況に合わせて、コースアングルとジンバルピッチを設定し、フライトマークをタップすれば、自動飛行モードで自動的にフライトして、撮影が開始されます。
撮影領域設定
「プロジェクトを作成する」ボタンを押した後に、画像のように、撮影領域を設定すると撮影コースが自動的に表示されます。飛行機での撮影のようにフライトプランを自分で考えなくても、自動でコースを表示してくれるので、面倒がありません。
コース基本設定 撮影高度を設定
撮影高度を設定すると、自動で解像度も設定されます。この設定にて、コース間隔も自動で設定されます。必要とする地上解像度から高度を計算し、コース間隔を計算するなど、面倒な計算は一切不要。視覚的に操作が行えるので、誰でも利用することが可能です。
詳細設定1 オーバーラップ&サイドラップ
オーバーラップを85%に設定します。設定方法も、画面上のゲージを動かすだけで完了する、カンタン操作で行えます。
サイドラップも同様に、画面上のゲージで設定できます。ここでは、75%に設定しています。
詳細設定2 コースアングルを設定
コースアングルとは、コース上にある障害物への接近回数が最も少なくなるように、コースの角度を変更して、最も安全なコースを決定する作業です。画面上のゲージを動かして、障害物への接近回数が最も少なくなる角度を選びます。
詳細設定3 ジンバルピッチを設定
ジンバルピッチは、シンバルに装着されているカメラのアングルを決定する作業です。通常のオーバーラップ(-90度)と、斜め撮影する角度を設定できます。
カメラ設定 ピント、明るさを設定
カメラ設定では、実際の画像を見ながらピントや明るさの設定を行います。せっかくフライとしても、撮影した空中写真がピンボケでは使い物になりませんからね。
自動飛行
画面右にある「フライトマーク」をタップします。「バッテリー・方位磁針・画像伝送・ミッション終了後の動作設定・SDカード・IMU・GPS・電波ロスト時のミッション」これらの項目を、自動チェックに入ります。
自動チェックが完了して、オールグリーン状態で「FLY」をタップすると、自動飛行を開始して撮影がスタートします。
ドローンで撮影した空中写真を自動でオルソ化が可能
先の「Autel Explorer」では、とてもカンタンにドローンで空中写真を撮影することが可能です。さらに、撮影した空中写真も、スカイマティクスが提供するドローン計測サービス「くみき」を利用すれば、標定作業をしなくても、経験を積んだ専門的なオペレーターがいなくても、自動的にオルソ画像を作成してくれます。
飛行機での空中写真測量では、オルソ画像を作成するには、熟練したオペレーターによる処理が必要ですが、ドローン計測サービス「くみき」ならそんな面倒は不要で、誰でもカンタンにオルソ画像を作ることが可能です。
ドローンでの撮影が好ましい、狭い範囲の空中写真測量ならスカイマティクスを利用すると、ドローンの空中写真撮影からオルソ画像作成まで、驚くほどカンタンに完了させることができるのです。
ドローンでの航空写真測量を行うなら、最新技術満載のスカイマティクスのサービスを利用することをおススメします。
【参考サイト】
国土地理院 オルソ画像について
https://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa40002.html