2022年11月16日

建設業でも2024年に労働時間の上限規制適用!
2024年までに取り組むべきことは?

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【2024年】建設業の働き方改革で変わることは?

「働き方改革関連法」が2018年6月に通常国会で成立し、2019年4月から順次施行されています。建設業では5年間の猶予が与えられていましたが、2024年4月1日から残業の上限規制が適用されることから、労働時間の上限を遵守しながら現場対応を完遂させる必要があります。

労働基準法では、1日の労働時間は8時間、1週間で40日、毎週少なくとも休日を1回与えることと定められています。

時間外労働に関しては、雇用者と会社側が36協定を締結し労働基準監督署に提出することで、月45時間、年360時間までの残業が認められています。

また、特別な理由があり上限を超えて時間外労働が必要な場合は、特別条項付きの36協定を締結することで、時間の上限を超えて時間外労働をさせることが可能でした。

しかし、建設業では法定労働時間を超えることは珍しくありません。加えて時間外労働の上限を超えて残業をさせても、罰則が課せられることはありませんでした。

今回の法改正で以下のように時間外労働に上限が定められることとなりました。

○時間外労働の上限(原則) ●月45時間・年360時間

○特別条項付きの36協定を締結している場合 ●時間外労働が年720時間以内
●時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
●時間外労働と休⽇労働の合計について、
「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
●時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度

これまでは時間外労働の上限を超えて時間外労働をさせても罰則はありませんでした。しかし、2024年4月以降は、上記に違反した場合、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科される恐れがあります。

建設業が生産性向上を必要とする背景

全産業の労働生産性の平均値は4,799円。最も労働生産性が高いのは金融・保険業で7,798円、次いで情報通信業で7,787円となります。これに対して、最も低いのは宿泊・飲食サービス業の2,555円、次が建設業の3,008円と全産業の平均を大きく下回っています。

建設業の労働生産性が平均以下となっているのは、従業員の労働時間の短縮が進まないことが課題として挙げられます。これを改善するために、2024年に罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されます。

2024年までに建設業者が取り組むべきこと

2024年には時間外労働の上限規制が適用されます。それまでに建設業者が取り組むべきこととして、国土交通省が「建設業働き方改革加速化プログラム」を作成しました。その内容は以下の通りです。

①長時間労働の是正 罰則付きの時間外労働規制の施行の猶予期間(5年)を待たず、長時間労働是正、週休2日の確保を図る。特に週休2日制の導入にあたっては、技能者の多数が日給月給であることに留意して取組を進める。

(1)週休2日制を後押しする

・公共工事における週休2日工事の実施団体・件数を大幅に拡大するとともに民間工事でもモデル工事を試行する
・建設現場の週休2日と円滑な施工の確保をともに実現させるため、公共工事の週休2日工事において労務費等の補正を導入するとともに、共通仮設費、現場管理費の補正率を見直す
・週休2日を達成した企業や、女性活躍を推進する企業など、働き方改革に積極的に取り組む企業を積極的に評価する
・週休2日制を実施している現場等(モデルとなる優良な現場)を見える化する

(2)各発注者の特性を踏まえた適正な工期設定を推進する

・昨年8月に策定した「適正な工期設定等のためのガイドライン」について、各発注工事の実情を踏まえて改定するとともに、受発注者双方の協力による取組を推進する
・各発注者による適正な工期設定を支援するため、工期設定支援システムについて地方公共団体等への周知を進める

②給与・社会保険 技能と経験にふさわしい処遇(給与)と社会保険加入の徹底に向けた環境を整備する。

(1)技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現する

・労務単価の改訂が下請の建設企業まで行き渡るよう、発注関係団体・建設業団体に対して労務単価の活用や適切な賃金水準の確保を要請する
・建設キャリアアップシステムの今秋の稼働と、概ね5年で全ての建設技能者(約330万人)の加入を推進する
・技能・経験にふさわしい処遇(給与)が実現するよう、建設技能者の能力評価制度を策定する
・能力評価制度の検討結果を踏まえ、高い技能・経験を有する建設技能者に対する公共工事での評価や当該技能者を雇用する専門工事企業の施工能力等の見える化を検討する
・民間発注工事における建設業の退職金共済制度の普及を関係団体に対して働きかける

(2)社会保険への加入を建設業を営む上でのミニマム・スタンダードにする

・全ての発注者に対して、工事施工について、下請の建設企業を含め、社会保険加入業者に限定するよう要請する
・社会保険に未加入の建設企業は、建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築する

③生産性向上 i-Constructionの推進等を通じ、建設生産システムのあらゆる段階におけるICTの活用等により生産性の向上を図る。

(1)仕事を効率化する

・建設業許可等の手続き負担を軽減するため、申請手続きを電子化する
・工事書類の作成負担を軽減するため、公共工事における関係する基準類を改定するとともに、IoTや新技術の導入等により、施工品質の向上と省力化を図る
・建設キャリアアップシステムを活用し、書類作成等の現場管理を効率化する

(2)限られた人材・資機材の効率的な活用を促進する

・現場技術者の将来的な減少を見据え、技術者配置要件の合理化を検討する
・補助金などを受けて発注される民間工事を含め、施工時期

(3)重層下請構造改善のため、下請次数削減方策を検討する

引用:「建設産業政策2017+10」について

建設業の働き方改革を進める上での注意点

建設業の働き方改革を進める上で、与えられた猶予期間内に「建設業働き方改革加速化プログラム」を推進する必要があります。加えて「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」の内容を、発注側・受注側の双方が理解し、一丸となって協力していくことが求められます。

建設業界の関係者は、時間外労働の上限規制が適用されるまでに以下の取り組みを進める必要があります。

①適正な工期設定・施工時期の平準化 建設工事における適正な工期設定等のためのガイドラインでは、工期を適切に設定し、施工時期を平準化するべきとしています。

工期を設定する際は、

●従業員の休日
●施行のための準備期間
●後片付けをする期間
●悪天候による作業不能な日数

これらを考慮したうえで、従業員が週休2日を確保できるように受発注者が協力する必要があります。

②必要経費へのしわ寄せ防止の徹底 工期を適切に設定する際、労務費、社会保険の法定福利費、安全衛生費などにしわ寄せが生じないように、防止策を徹底する必要があります。加えて生産性向上の努力に応じて精算や見積もりを適切に行い、適正な代金で契約を締結するべきとしています。

③生産性向上 生産性向上のために調査、測量から維持管理などに至る段階で、受注者・発注者が連携し次のような取組で建設生産プロセスの生産性向上を推進する必要があります。

●ドローンによる3次元測量やICT活用工事の促進
●BIM/CIMの活用
●フロントローディンの活用
●書類授受の省力化
●工法の効率化や汎用性の高い工法の導入
●新技術の積極的な導入や活用

④下請契約における取り組み 下請契約の場合も、従業員に規約違反となる長時間労働をさせない、週休2日を確保するなど考慮して工期を設定する必要があります。また、下請けは施行を円滑に進めるために、工事着手前に工程表を作成し、工事の進捗状況を関係者と共有すべきとされています。予定された工期で完了しない場合は、元請けと協議した上で、工期を適切に変更する必要があります。

⑤適正な工期設定に向けた発注者支援の活用 ガイドラインでは、発注者支援の活用についても明記されています。特に公共発注者が技術者不足などの理由から適切な工期設定などを行えない場合、工事の特性を踏まえた上で発注者支援が可能な外部機関の支援を活用すべきとしています。

なぜ生産性が低いのか?課題を洗い出そう

生産性向上のためには、なぜ生産性が低いのか、どこを改善すべきかなど課題を洗い出す必要があります。

建設業界の労働生産性の低下を招いている原因として「人手不足」や「煩雑な事務作業」が挙げられます。

建設業は慢性的な人手不足に悩まされています。仕事量に対して人手が不足していると、1人あたりにかかる時間や負担が大きくなります。結果、コストパフォーマンスが低下し、生産性を下げることになります。

しかし、単純に人手を増やせば解決するかというとそうでもありません。新人の募集や採用、教育には多大なコストがかかります。現場の問題は解決するかもしれませんが、経営を圧迫しかねません。新たに人を雇い入れる以外で、現場の負担を軽減する方法を模索する必要があります。

また、煩雑な事務作業も生産性の低下の一因となっています。事務作業が多くなることで工数が増加し生産性が下がってしまいます。事務作業の煩雑さを解決するために、無駄な部分がないか業務フローを見直して、逐次改善する必要があります。

企業の規模に関係なく生産性を高められる方法

生産性を高める方法はいくつかありますが、その中でも以下でご紹介する方法は、企業の規模に関係なく生産性を高めることが可能です。

●「働き方改革」を推し進める 働き方改革では、業務の効率化や従業員の待遇改善が主な目的です。そのために必要なのは「長時間労働の改善」「正社員と非正社員の待遇の見直し」「柔軟な働き方の推進」が挙げられます。

●従業員のスキルの底上げ 従業員ひとりひとりのスキルを底上げすることで、今よりも生産性の向上が見込めます。「特別な技術や知識を持つ人がいなくなると仕事が回らない」といった状況をなくし、だれが携わっても高い水準の結果が得られるようにするべきです。

●ITの導入やDX化を推進する 問題のあるアナログな方法を続けているうちは、生産性の向上は見込めません。ITツールを導入したりDX化を推進することで、業務の進行を妨げていた課題や問題の解決が可能になります。ただし、現場にITツールなどを導入する際は、誰でも使えて理解しやすいものを選ぶ必要があります。導入や操作が難しいツールでは、余計に業務を遅らせることになりかねません。

事例

「働き方改革」を推進するといっても、あまりピンと来ない人も多いはずです。そこで、以下では働き方改革に取り組む企業の事例をご紹介します。

働き方改革の事例① 残業や休日出勤をあえてできない環境を作ることで、時間外労働を削減することに成功した事例です。労働時間以外は作業所を閉鎖することで、休日出勤や残業を減らすことができました。また、週一日はノー残業デーを設定し、会社側と職員組合が一丸となってノー残業デーを推進するための声がけを行いました。

働き方改革の事例② ICTやロボット化を導入したことで、業務効率の向上や新たな施行技術の開発に成功した事例です。従業員にモバイルデバイスを配布し、ICTやクラウドを活用することで図面や書式などを電子化したり、新たな施工技術の開発に成功しました。加えてICTを活用して情報を共有化・標準化することで、生産性の向上にも繋がっています。

働き方改革の事例③ 工事現場にドローンを導入したことで、計測にかかる時間を大幅に短縮できた事例です。ドローンを導入する以前は、測量テープや検尺スタッフなどを使い、複数人の作業員で2~3日かけて計測を行っていました。ドローン導入後は、計測を数十分で終わらせることが可能になりました。加えてドローンの操作は作業員1人と補助員のみで対応できるため、作業時間だけでなく人員の削減にも繋がりました。

ドローンを活用した建設現場の生産性向上

「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」においても、生産性向上のためにドローンによる3次元測量が推奨されています。

そこでドローンによる3次元測量が可能である「くみき」を、ご紹介しましょう。「KUMIKI」ドローン測量・現地管理DXクラウドは、ドローンで撮影した画像をアップロードするだけで、オルソ画像や3D点群といった地形データを自動で生成することが可能です。ドローン測量が初めてのビギナーの方でも、直感的な操作で面積・体積・断面といった計測ができ、三次元測量を実現できるといった特徴があります。

他にも「KUMIKI」ドローン測量・現地管理DXクラウドには、以下のような便利な機能が充実しています。測量データ、現場写真、及びテキストの整理、管理、共有などは毎日行う時間を要する作業であり、生産性の向上に大きく寄与します。「くみき」は、サポートチームがありますので、万が一トラブルが起きた際も安心です。

【写真や地形データの整理・管理が楽になる】 ●異なるエリアの画像もまとめてアップロードが可能
●対空標識の座標情報を取り込み、絶対精度を担保したオルソ画像を生成
●GCPなしでも自動で特徴点を抽出、異なる時期に空撮されたオルソ画像の位置合わせが容易に

【写真や地形データの共有が楽になる】 ●オルソ画像やDSMを国土地理院地図やGoogleMapsなどに重ねて表示
●ウェブ上の地図やオルソ画像上で、現場で撮影された写真や動画を管理できる
●ダグやラベル機能で画像の整理や検索もラクラク行える

まとめ

2024年4月には、時間外労働や休日出勤が多い建設業界においても時間外労働の上限規制が適用されます。これを遵守するためには、今のうちから適切な工期の設定や、生産性の向上などに取り組む必要があります。建設業に多く残る課題や問題を解決するためにも、従業員のスキルの底上げやドローン・ITツールなどの導入を検討することをおすすめします。